東京・青山のフレンチレストラン、「Florilege(フロリレージュ)」。フランス語で詩華集という意味だそう。
シェフはフランスでの修行のほか、ル・ブルギニオンやカンテサンスといった、ミシュランの星にも輝いた名店での経験を積まれた川手寛康氏。ソムリエの資格もあわせもつ川手さんの料理とワインに浸ってきました。
夜はアミューズからデザート、コーヒーまでの10品のコースのみ。この日のアミューズはそば粉のガレットキャビアぞえ。ガレットに包まれたふんわりやさしいマッシュポテトとキャビアの旨塩味は絶妙のバランスで、始めからシャンパンもすすんでしまいます。
メインディッシュ・魚料理の鰆とアワビ茸やオシロイシメジたちは、そえられたアボカドやココナッツなどのソースとの相性も抜群。やさしい脂ののりぐあいだった鰆にはちょうどよかったな。
また印象に残ったのはコースの構成。それぞれの献立たちが、前後の品々と連携し、ストーリー仕立てで提供されるそのスタイルは、ちょうど茶事懐石のよう。例えばメインディッシュ・お肉料理の一品目は赤キャベツや玉ねぎのグリル、ナツメグやビーツのソースなどとともに供されたバスクのキントア豚のステーキ、そしてお肉の二品目には、一品目のお肉料理と同じキントア豚の異なる部位を芽キャベツで包んだシュークルートが供されるなど、茶事懐石の強肴のような登場の仕方で、あますところなく素材を生かし頂ききるという感じです。そしてデザートに添えられた花にも小さく可憐な水が打ってあり、シェフの心遣いを端々に感じられるコース内容でした。
ただ、一部の献立ではコースの流れや使っている食材などを質問スタイルとともに提供されることもあり、好みの別れるところかもーというのと、今回のキントア豚のステーキの火加減はこちらの好みを聞かれることなくシェフの加減で供されました、これも好みの問題となるところですが、合わせて付記しておきますね。
ワインの方は、お料理ごとに好みを伝えながらあうものをグラスで頂けるのはいいですね。鰆やキントア豚に合わせたムルソーやシャトー・ランシュ・ムーサは、絶妙のマリアージュでした。
そうそう、最後に、お店を出て帰る際には、お店エントランスへ向かう通路の脇の壁と同化しているような扉があり、そこからシェフが出てきて、サービスの方とともにご挨拶をしてくださいます。客の姿が見えなくなるまでいらっしゃるというスタイルには、まるで茶事にて客を見送る亭主のよう。
と、ざーっと感じたことをつらつらと記してみましたが、シェフとスタッフ皆さんの思いのつまったFlorilege、時折照れてしまうような会話や食事のシーンも、たまのちゃんと頂くフレンチディナーにはいいのかもです。
店内ほぼノーゲストにな頃に一枚だけぱちり。”花は野にあるように”利休七則を感じた花に落つる雫でした。