深い切れ込みが涼しげな雰囲気をかもしてくれるこの葉、触ってみるとふわふわと、ちょっとチクンともする細かい毛が生えています。短冊の代わりに梶の葉を用いていた昔の七夕は、中国の乞巧奠(きっこうでん)が由来とされ、平安の頃は古代より神木として尊重されていた梶の木の葉に歌を綴り飾られていたそうです。
先日の茶道の稽古でも、水指の蓋として、季節の梶の葉をあしらった「葉蓋」の扱いをいたしました。畳の上に静かに座る水指の上に、露をしたためた梶の葉。何度も見ているはずなのに、なんて涼やかな景色なんだろう、と毎年気持ち踊っています。
茶懐石では、口に入れないものは膳にも器にも出さないという約束事はありますが、通常の食卓や会食では、今の時期、梶の葉を使い初夏のしつらえを楽しんでいます。
農耕や豊作を意味する牽牛星、手技や機織りを意味する織姫星。食と糸をなぞらえて、江戸の頃より七夕には素麺、な食の習慣も。七夕の頃より、食卓への素麺頻度が上がります。夏の始まりですね。